日本災害福祉研究会の第一回研究大会の開催について
日本災害福祉研究会の第一回研究大会の開催について
【大会報告 シンポジウム】災害支援の展望~様々な常設的取組みに向けて~
コーディネイター- 大島 隆代 氏(文教大学)
- 石井 誠 氏(秋田市社会福祉協議会)
- 及川 真一 氏(日本赤十字東北看護大学介護福祉短期大学部)
- 石塚 裕子 氏(東北福祉大学)
- 高橋 良太 氏(全国社会福祉協議会)
- 髙杉 威一郎 氏(全国社会福祉法人経営者協議会災害支援特別委員会/社会福祉法人峰栄会)
日本災害福祉研究会の記念すべき第一回研究大会の中心企画であるシンポジウムが令和7年7月27日、秋田県社会福祉会館にて行われた。
今回のテーマは「災害支援の展望~様々な常設的取組みに向けて~」であり、実践報告と研究的視点を交えた多角的な議論が展開された。
シンポジウムでは、まず石井氏から、2023年7月豪雨での秋田市社協の対応が報告された。約15,000件に及ぶローラー調査を実施し、被災者一人ひとりの声を丁寧に拾い上げたこと、技術系NPOとの役割分担により専門的ニーズにも対応したこと等が紹介された。夏場の活動ということで、熱中症アラート発令時には活動を制限するなど、現場判断による工夫もあった。一方で、ボランティア不足や組織拡大に伴うマネジメント力の不足など課題は多く、ボランティア募集や災害ボランティアセンターの運営者募集にあたっては、企業連携を含む平時からの人材確保策や、外部支援の受入れを調整できる仕組みが必要であると強調した。
続いて、及川氏からは、防災を「非日常」から解放する防災教育の試みが紹介された。アウトドアやキャンプと組み合わせた体験型防災教育により、楽しさや参加型の学びを通じて子どもや住民の意識を高める実践であり、「必要と分かっていても備えない」防災の現状に対して、防災を日常生活に自然に取り入れる工夫が欠かせないと述べた。フェス形式の防災キャンプや障害者も参加するプログラムなど、「体験が先」の多様なアプローチが提案された。
石塚氏からは、知的障害者が避難所支援を担った事例や、防災を地域のお祭りに組み込んだ実践を示し、「支援する/される」という区別を超えた関わりの可能性が提示された。災害対応では役割分担が重視されがちであるが、「分担」により機能不全や分断が生じることも多く、支援される人という「分担」が、小さな声の人の力を潜在化させている可能性が高いことから、「分担」が転換したり、多様化することが、誰もが助かる社会を創る契機になると語った。
シンポジストに対する質疑応答では、災害ボランティアセンターでの福祉ニーズの把握方法や、防災教育を地域に根付かせる工夫について質疑が行われた。石井氏は福祉ニーズの把握方法について、「人海戦術で訪問し信頼関係を築いた後にようやくニーズが出てくる」と現場のニーズ把握の難しさを語り、及川氏は防災教育普及の工夫について「熱意を示しメディアとも連携することが広がりの鍵」と回答した。石塚氏は、あえて行政に反発的な地域を対象に研究を進め、結果として行政との連携の必要性を住民自身が実感したという事例を紹介した。
コメンテーターからのコメントでは、髙杉氏からは、平時の防災訓練を積み重ねることが地域還元につながることや、災害時には福祉分野の多様な情報を一元的に扱える体制の重要性について指摘された。高橋氏からは、社協のみでの対応には限界があり、外部支援者を調整する常設機関が欠かせないと強調した。災害福祉支援センターを「知識と知恵と記憶を蓄える拠点」とし、防災と福祉が連携する機関を制度的に位置づける必要性が語られた。
最後に、シンポジストから今年度秋田県社会福祉協議会にも設置された「災害福祉支援センター」に対する期待が述べられた。
石井氏は役割の明確化と現場とのすり合わせの重要性、及川氏は技術系NPOとの連携とその継続性の課題について、石塚氏は「支援される側も関われるセンター像」を示し、多様な参加を可能にする場としての可能性を強調した。
本シンポジウムを通じて、災害時に効果的な支援をするためにはいかに平時に体制を整えるかが重要であり、近年脚光を浴びる災害時の「福祉」支援を平時から行うための知識や経験の蓄積の場として、常設型の災害福祉の専門機関である「災害福祉支援センター」へ寄せられる期待は大きなものであると実感した。
(報告:全国社会福祉協議会 全国災害福祉支援センター 駒井 公)



